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第三章 「電脳覇者バリュースターNX」 |
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ゲートを抜けると、そこは戦場だった。
「なんだよ、あれ...!!」
巨大な人型兵器バリュースターが立っている。その向こうにはさらに大きい山のような物体がゆっくりと動いていた。
「全体はほぼ完全な球体です。かなり巨大な・・・」
南極に到着した彼女たちを待っていたのはバグの大部隊と巨大な黒い球体であった。
バリュースターは静かに地上でたたずんでいる。
彼もまた攻めあぐねているようだった。
足元には何機かのバグの残骸が転がっている。
あたりには遠雷のような砲声が響いていた。
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この世界における解説 |
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現実世界における解説 |
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球体の内部をスキャンしていたチャムの声がこわばる。
「あいつの目的が解りました。内部に高出力の核融合炉をもっています。あの球体はいわば人工太陽ともいうべき兵器です。」
「南極の氷を溶かすつもり?」
「そんなんじゃすまないよ、地表がすべて焼き尽くされちまう。」
なんとしてもあの球体を破壊しなければならないが、他の国連軍も同業者もあてにはできなかった。彼等はバグの大群の侵攻阻止で余裕がない。
「私たちだけでやるしかない...!!」
しかしラヴィ三機では戦力の差がありすぎる。
「あいつ・・・バリュースターは一緒に戦ってくれるの?」
ウィンにたずねる。
「彼もそのつもりのようです。協力しあおうと言ってます。」
エリたち三人と共闘した方が戦術的に有効と判断したのだ。
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スキャン |
チャムのラヴィは、赤外線やX線など複数の放射線測定を行い、電子的に内部構造を解析することができる。 |
画像などを光学的に読みとりデジタルデータへ変換すること。代表的な機器にイメージスキャナがある。 |
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バリュースターから、エンコードされた怪球体のデータがウィンへ次々と送られてきた。
ウィンは3機のラヴィへデータをデコードしながら転送する。
怪球体の外壁の隙間とメインシステムの位置がラヴィのモニタに映し出された。
続いて外壁の隙間からラヴィが入りこみ、メインシステムへ突入するシミュレート画面が送られてきた。
「外部からの攻撃ではヤツの防壁は破れない。また、核を爆発させてもいけない。内部からの破壊工作でシステムダウンをはかるしかないだろう、といっています。」
内部から破壊..。ナオは意を決する。
「チャム、できるかい?」
チャムでなくてはこの仕事はこなせない。
「確率は高くはないですけど..。できます。」
ウィンが続ける。
「機体を一時分離させ、チャムさんの援護を行うそうです。」
「分離って、そんなこともできるんだ、バリュースターさんって。」
やはり変形合体は巨大ロボの基本だよねぇ、などと、エリが呑気に考えている間にもバリュースターの上半身と下半身がわかれ、それぞれが変形を開始し鳥型の飛行メカと巨大なドリルのついた装甲車両となった。
「飛行メカがバリューコンドル、ドリル戦車はその名もドリルスターです。かっこいいでしょ。」
ウィンも相当な呑気ものだ。エリとは良いコンビかも知れない。
「よし!チャムがラヴィ03で内部に侵入後、ヤツのシステムをハッキングしてシステムダウンさせる!」
「了解。ウィンさん、バリューコンドルでラヴィ03の援護をお願いします。」
「分かりました。」
それを聞いたエリはちょっと心配そうだ。
「大丈夫?」
「ありがとうございます、でもこれは僕の役目です!ロボットとはいえ男ですから!」
エリは熱血しているウィンを軽く抱きしめる。
「うん、そ〜だね!ウィンくんはオトコノコだもんね!」
(はぅぅエリさん、それはまずいですぅ!!)
「・・・ショタコン」
「ショタですね・・・」
ナオとチャムが同時に感想を漏らした。
「さぁて!エリわたしらは囮だ!派手に暴れて奴等を引きつけるなよ!」
作戦とも言えない作戦だが他に手はない。時間も装備も少なすぎるのだ。
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エンコード |
アナログデータのをデジタル化、またはデジタルデータを別形式に変換すること。ファイルサイズを小さくする圧縮や、セキュリティのための暗号化などがある。 |
デコード |
エンコードされたデータを元の形式に戻すこと。 |
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