第二章 「バリュースター飛ぶ」
 

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「と、いうわけでぇ、これがすーぱーろぼっと「バリュースター」だよぉ〜ん!」
ウィンの身の上話に、途中からエリが参加したため半ば支離滅裂になりながらも、なんとか二人は事情を理解した。

「はぁ〜、スーパーロボットねぇ」

ナオが呆れたようなため息をつく。彼女にしてみればこれだけ巨大なサイズの機動兵器などアニメの世界以外では考えられなかった。

スーパーロボットねぇ..。だけどなんかさびついてないか、これ?」
「はぁ、何十年もこの状態でしたから。」

ウィンがすまなさそうに答える。
異界のバグについてナオが尋ねた。

「ウィン君、あの昆虫のような無人兵器、私たちはバグって呼んでるけど、あいつらについて何か知らない?」

ウィンはちょっと困ったような表情をして答えた。

「すみません。データがありません。」
「そっか..。」
「ところで、ウィンくんはここでなにをしてたの?」

今度はエリが尋ねた。

「僕に与えられた命令は『待つ』ことです。そして今、あなた方が現れました。」
「え、それってどういう..?」
「みなさん、ちょっとゆれますよ。」
この世界での解説 この世界における解説
現実世界での解説 現実世界における解説

先程からラヴィと基地の端末をリンクしてシステムのモニタリングを行っていたチャムがつぶやいた。

がこん!

いきなり機械の作動音があたりに鳴り響いた。チャムがこともなげに報告する。

「この巨大ロボのリフトに動力が入りました。動きますよ、ここ。」

警告灯が灯り、四人を乗せた巨大なリフトが上昇を開始する。

「何!何なの!」
モニタリング
現実世界での解説システムなどの状態を監視すること。Windowsのツールの一つ、システムモニタを使うと、CPUの使用率など、システムの状況を監視することができる。

起動は、スタート→プログラム→アクセサリ→システムツール→システムモニタ。

「こ、これは・・。バリュースターが戦闘モードでリブートしています!」

データリンクしたウィンが答える。

「戦闘AIからの報告です。"奴ら"が動きだしたので発進すると言ってます。」
「"奴ら"?バーサーカのこと?近くなの?」

ナオがラヴィに乗り込み、コクピットのモニターを切り替える。しかしラヴィのセンサーは何も捉えていない。

「わかりません。接続を切られてしまいました。」
「勝手なロボットさんだなぁ〜」

少し考えてからナオが指示を出す。

「とにかくあたしらもラヴィで発進するよ!ちょっと気になるんだ。」

地下格納庫のハッチがゆっくり開き、月明かりに照らされたバリュースターがゆっくりとその巨体を現す。

その姿は荘厳な巨石像にも見え、ある種の畏敬の念を感じずにはおれない光景であった。そして、バリュースターはゆっくりと翼を広げ悠然と月に向かい飛び去っていった。
リブート
現実世界での解説再起動する事。パソコンのシステムを起動させることをブートと言う。