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第一章 「ファーストコンタクト」 |
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異界とは我々が存在しているこの世界とはまったく違う進化を続けてきた別次元の地球であり、ゲートとは異界へと通じる特殊な空間の事である。
「せっかく来たのに、テストだけで帰るのはもったいないかな?」
気の強そうな少女がパープルの髪を指で弄びながら呟く。
名前はナオ、かわいいと言うより美人、まさに姉御といった感じだ。
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この世界における解説 |
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現実世界における解説 |
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彼女の前にある液晶モニターは機械的に点滅を繰り返している。
彼女たちは、異界に残された超技術の回収をビジネスとしている。
「このまま行くと陸地があります。前回の調査では僅かに反応のあったところです」
ナオの後ろで緑色の髪をした少女がクールに答える。
まだ幼さの残る少女の名はチャム。
「ボクが先行してみる。ハッチ開放、ラヴィ出ま〜す!」
「ちょっとエリ、気をつけなさいよ、ゲート消失まで余裕無いんだからね」
「だぁ〜いじょうぶ!ラヴィと一緒だもん!」
学校へ行く、といった感じで高機動モバイルスーツ・ラヴィで発進したのは、先程からモニター越しに元気を振りまいていた少女、エリである。
ちょっとタレ目の大きな瞳がなかなかカワイイ。
「さぁ〜てと、何かめぼしい物は〜」
エリがなれた手つきでキーボードを叩くと巨大なラヴィは鮮やかに機体を右旋回、反応のあった地点で緩やかに高度を落としていく。
「なに?この感じ・・・」
空中を駆けるエリの意識に何かが引っかかる。
広大な荒野の中に何かがあるのだ。
スロットルを握り、前方に意識をむけたその時!
「えぇ!ミサイル警報ぉ〜」
コクピット内にアラームが鳴り、集中ディスプレイにデータが表示される。
「・・多弾頭ミサイル!こぉんのくらいでぇ!」
瞬時に機体に回避行動をとらせ、レーダーのジャミングを開始。
おっとりしているようで三人の中では一番操縦技術に優れているエリは僅かな乱れもみせずコクピット内の機器を操作していく。
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液晶モニター |
LaVie NXには、迫力の14.1インチ大画面TFT液晶パネルを搭載。たっぷりの見応えと豊かな表示能力が魅力です。 |
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ラヴィの機体は内燃機関を持たず、異界で手に入れたHDドライブと呼ばれるブラックボックス化されたモジュールを動力源としている。そのためラヴィはほとんど赤外線放射をしないので熱探知はあまり効果がない。だが逆に飛行中は反重力エンジンが全開なので重力場の乱れによりすぐ発見されてしまう。特にエリのラヴィは6GBの高出力タイプを搭載しているのでなおさらである。
「続いてダミーポッドくん射出!」
小型の反重力飛行体が文字どおりダミーとなる装備である。
もちろん異界よりサルベージした物で装備数はあまりなく、高価である。
「・・・エリさん。あまりばんばん使わないで下さいね。」
「い〜の!ボクは出し惜しみはしないの、つかえるもんは全部使う!」
「とはいっても、あたしら軍隊じゃなくて民間企業だしねぇ〜」
どうやら資金繰りは厳しいらしい。
機動兵器や大型輸送機を民間で運用すれば当然だろう。
ナオのモニターにダミーポッドを示すマーカーが次々と写し出される。
大量のミサイルを巻き込み消えていくダミーのマーカーをナオが恨めしそうに見ている。
「こりゃ何がなんでも今回はお宝を持って帰らにゃ」
「・・・ナオさん」
「なに?」
「ナオさんのラヴィ、スタンバイできてますよ」
ナオが苦笑する。
「ありがと、チャム。どっちみちあの娘だけ戦わすわけにゃいかねーかんな」
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HDドライブ |
異界にあった技術で作られた謎の駆動装置。 |
固定記憶装置(ハードディスク)。LaVie NXでは最大10GBを搭載 |
GB |
ギガバースト:この世界の推進力の単位。 |
ギガバイト:記憶容量の単位。1MBの1000倍を表す。ただし、コンピュータは2の累乗で単位を表すため、2の10乗(1024)が一般の1000倍となる。よって1GBは約1024MB。 |
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