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珍名さん来たれ!千葉市のはんこ店
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「珍名さん勝負!」 店先の大きな看板が目に入る。千葉市若葉区桜木町のはんこ屋「モリシタ」。森下恒博さん(68)が「日本に名字は35万種類以上ある」と集めたはんこが、珍名さんたちを待ち受ける。
近所に八月一日(ほずみ)さんという珍しい名字の人がいた。「変わった名前があるもんだな」と興味を持った。電話帳を最初から最後まで眺め、珍名を見つけると、読み方を知りたくて本人に電話した。
3年ほど前、ある客が「煙草(たばこ)……なんですが」と店を訪れた。「たばこ屋じゃないのにな」と思っていると、「『煙草』のはんこをください」と名刺を差し出した。森下さん自身、あるかどうか半信半疑で探してみると、「煙草」のはんこはケースにあった。
千葉市緑区の煙草慶一さん(31)は「その日はどうしてもはんこが必要だった。自分の名前があるのはうれしい」と振り返る。「今まで店頭に置いている店なんてなかった」と煙草さんが驚く様子に、森下さんは胸を張った。
逆に、ケースの中に客の名前がなかったときはがっくりと肩を落とす。「お客さんが、欲しい、と言ったときにすぐ渡せないとだめ、と思っている。意地もあるけどね」
実際に売れたのは、煙草さんのほか、狼(おおかみ)さん、留守さん、油さんなど。みんな、ケースの中にあったはんこを買っていった。
97年に発行された「日本苗字(みょう・じ)大辞典」には、約30万種類の名字が載っている。同じ漢字でも読み方が異なれば違う名字と数えている。しかし、その分厚い辞典にも載っていない「珍名さん」が時々、店を訪れる。森下さんが辞典の編者に伝えた「珍名さん」は50を超えた。
店内には、読み方で数えて10万種類、7万本のはんこがある。「ほかの店には絶対負けない。でも、どんな名前でも絶対ある、とは言いきれない」と話す。
はんこの売り上げは全体の2割弱。それでもはんこに一番熱が入るのは、「人の気持ちをざわつかせるのが好きだから」という。
味噌(みそ)さん、醤油(しょうゆ)さん、金持(かねもち)さん、裏口さん……。「この名前はある」と断言して、はんこを用意している。 |
(9/1) |
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