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「はぁ、エリさんは異世界の方だったんですか。」 「うん、ボクたちはこの世界の技術を持ち帰るのがお仕事なんだよ。」 「するとぼくは...」 「大丈夫、ウィン君は誰にも渡さないよぉ」 なぜか赤くなるウィン。 「ヘンな意味じゃなくてね。」 ちょっとがっかりするウィン。もちろんエリは全然気づかないが...。 「ん〜、ウィン君、どっかにシャワーないかな?」 「シャワーですか?すみませんここには現在使用可能なシャワールームはありません。」 迎えがいつ来るか分からないので、とりあえず汗を流したかったのだが仕方がない。 「あ、でも着替えでしたらそこのコンテナ内が使用可能ですよ。」 白いコンテナの扉の奥には整備用のつなぎやらが雑然とおかれていた。 「やった〜!ラッキ〜とりあえず男物でもなんでもいいや!」 ウィンの目の前でいきなりパイロットスーツを脱ぎ出すエリ。 |
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その表情は変わらないが、ウィンのCPUはこの事態に対処する事ができずオーバーフローを起こしかけていた。 「---**::--対処不能。成人女性が脱衣を始めた場合にとるべき行動::::データがありません。:::--システムがビジーになっています--」 ふと気がつくとエリがこっちを見ている。 「ウィン君、眼がえっち〜」 「ご、ご、ご、ごめんなさい!」 いきなり服を脱ぎだしたエリが悪いのだが、とりあえずウィンは走ってその場を離れた。 (忘れてたよぉ〜、ウィン君も一応男の子だったんだ〜) いつもはナオやチャムしかいないので他人の目線を気にもとめていなかったのだ。 エリがちょっと反省している頃コンテナの後ろでは純情すぎる少年が思考をループさせていた。 (はぅ〜、エリさんに嫌われたかな〜、ユーザーには礼儀正しく接しなければならないのに、僕はなんてことを・・・) |
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機銃の乱射音と、それに続き着弾音が土砂降りの雨音のようにコクピット内に響く。 装甲されているとはいえ、運動性の低い輸送機ではこのあたりが限界のようだ。 「これまでね。チャム!機体を自爆させるよ!それにまぎれてラヴィで脱出、いいわね。」 「了解です。あとは地上を進みましょう。」 「これじゃ助けにきたんだか、遭難しにきたんだかわからんな...」 至近距離でミサイルが爆発、コクピットが衝撃で揺れる。 「いよいよヤバイな、これは...」 |
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機体をゆっくり降下させてオートパイロットに設定。地震のように揺れる機体の中、二人は格納庫へ向かう。 すでにラヴィはハイバネーションで待機中だったので、コクピットに乗り込むと同時に発進体制に入る。 「後部ハッチを開放、ラヴィ固定解除。私が先行してジャミングをかけます。敵センサーがハングアップしている間に脱出を!」 「了解!さぁ派手に行くよ!」 チャムのラヴィ03が発進、直後にジャミングを開始。続いてナオのラヴィ02が空中に躍りでる。 ほぼ同時に自爆システムが作動、派手に火球を広げ部品を撒き散らしながら巨大な輸送機が落下していく。 二機のラヴィもその爆発に巻き込まれたようにみえた。 バグ達は敵対勢力の壊滅を確認するべく輸送機の墜落現場へ群がっていった。 「えっと、ウィン君?」 遠慮がちに声をかけるエリ。 「な、なんでしょうエリさん!」 コンテナの後ろでイケナイ妄想に胸を膨らませていたウィンは必要以上に大きな声で答える。 (ど、どうしよう変なロボットだと思われたかなぁ) エリはどぎまぎしているウィンに近づくと、彼の肩を掴みゆっくりと床へ押し倒した。 (はわわ〜!エリ、エリさん、なにおぉ〜、ダメです!まずいです!キケンですぅ!!) ものすごいパニックに陥るウィンに対してエリは冷静だった。 「静かにして、何か近づいてくる」 「え?」 基地の外周センサー異状無し、レーダーも何も捉えてはいなかった。 「ですが警戒システムには何も・・・」 「ボクにはわかるの、何て言うかなその手の勘が生まれつき鋭いの。」 |
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エリの言うとおりなら敵はこちらのシステムにハッキングし、欺瞞情報を流していることになる。 まさかこの基地のシステムを乗っ取ることができるバグがいるとも思えなかった。 「とにかく内部へ」 ウィンが体を起こしたその時、 「これは!」 今度はウィンにも感知できた。 何か来る。 とっさにエリはウィンの小さな体を守るように抱きしめる。 轟音とともに黒い影が目の前に現れた。 しかし、このエンジン音、この鮮やかな青い機体は...! 「チャム!ナオちゃん!」 一瞬驚いたエリだったが、すぐに仲間の機体だとわかり、声を上げる。 ラヴィの上半身が持ち上がるように装甲が開放され、その奥からナオが姿をみせる。 続いてもう一機もコクピットを開き、チャムも顔をのぞかせる。 「二人とも来てくれたんだぁ〜」 エリが喜びの声をあげる。しかし二人の視線は冷ややかだった。 「エリ、いくらかわいいからって小学生はマズイだろ、やっぱ。」 「エリさん...フケツです。」 そう言われてみればエリの体勢は...。 「ちっがっ〜う!」 真っ赤になって反論するエリ。何だかうつむいて照れているウィン。< 「ちょ、ちょっとぉ〜ウィン君もなんとかいってよ〜二人ともそんなんじゃないんだからね!」 「わたしらさんざん苦労してここまでくれば、なぁ。」 「エリさん、着替えてるし...。」 「ちっがぁぁぁぁぁぁぁぁぁう!」 |
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