第一章 「ファーストコンタクト」
 

04

異界を落下しながらも、少し騒いだら落ちついたらしく、エリは冷静に機体のチェックを始めた。
モジュールの自己修復機能が働いたらしく機体の制御は何とか可能になっていた。
徐々に落下のスピードを落とし、着地の体勢を整える。

「ん?下になにかある...」

ミサイルの発射施設のような平たい建造物が森に覆われるように建っていた。

「とりあえず、あそこに・・」

機体を向かわせ、建物の前に緩やかに着地。
すぐにセンサーを作動、周囲に敵はいない。
建造物の構造をスキャンしてみると中は大きな空洞になっているらしい。

「やっぱ、ミサイルかロケットでもあるのかな?」

そう考えたとき、入口らしき扉がゆっくりと開いた。

「入ってこいってコト?」

なんにせよこのままでは敵に見つかる公算が高い。通路は大きくラヴィなら入れそうだ。

「ええ〜い!おじゃましま〜す!」

エリは意を決してラヴィを前進させた。
ラヴィのヘッドライトを点灯させ薄暗い通路を進む。両側に扉はなく巨大なダンジョンのようであった。
導かれるように奥へと進む自分にエリは気付く。
「・・なんだろう。いかなきゃいけない気がする。ボクを呼んでるようみたい」

エリが意識を集中させると微かに声がきこえた様な気がした。泣いてるような寂しげな声。センサーには反応していないがエリの心に確かに呼びかけている。

「・・・・・ヤットキテクレタネ・・・・・。」
「この先にいるんだね。君は」

いつのまにか通路は途切れ大きな扉が現れる。何年も開けられることがなかったのだろう、錆が浮き出ていた。

「このむこう・・・」

ラヴィの手で大きな扉を開ける。暗くてよく分からないがかなり広い空間が現れた。中央には何かの機械が寄り添うように集まっている。廃棄物の固まりに見えたそれらが単なるガラクタではない証拠に規則的に小さな光がともっていた。

(ううぅ、なんだかこわいようぅ)
「おまちしてました。」
「わ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」

突然声がした。あわててモニターを声の方向にズームさせると正面の機械の中に人影が見える。

「き、君はだれなの?(どうして異界に!)」

驚きで言葉が続かない。ライトに照らされた人影は少年であった。

「質問は後で。それより姿を見せて下さい。あなたはニンゲンなのでしょう?」
「う、うん。」 (不思議、こわくない。初めてあった気がしない。なんで?)

エリはラヴィのハッチを開けラダーを滑り降り、少年に歩み寄る。

(男の子、だよね...?)

中性的な少年であった。
瞳の優しさが彼をボーイッシュな少女にも見せていた。

「・・こんにちは。ボクはエリ、君は?」

突然、少年が飛びかかってきた。
あ、と思う間もない素早い動作だった。
そして気づくと自分に抱きついて彼は泣いていたのだ。

「あ!え?ねぇ、ちょっと、落ちついて。ね、どうしたの?」

少年は我に帰ったのか、あわてて体を離すと涙を拭きつつ答えた。
この世界での解説 この世界における解説
現実世界での解説 現実世界における解説
「ご、ごめんなさい。ぼくはバリュースターのOS、サポートドロイド・ウィンです」
(ばりゅうすたぁ?さぽーとどろいど?・・・ドロイドってことはロボットのコトだよね、え、え、え〜〜〜)
「待って、君はロボットさんなの?」
「はい、バリュースターのメインシステムとニンゲンの方が円滑にコミュニケートできるようにするのが僕の役目です。 そもそもサポートドロイドというものは・・・・。」

驚くエリに自分の詳細な機能を説明し続ける彼を押し止めた。

「待って、待って、一度に言われてもわかんないよぉ〜」
「あ、すみません。ごめんなさい。」
「いいってば、そんなに謝らなくても。ね、落ちついて。」
「はい、すみません。」 (妙に腰の低いロボットさんだなぁ、あ、ドロイドだっけ。でも機械には見えないよう)

身長はエリよりも大分低い。どうみても9〜10歳くらいの男の子にしか見えない。

「ね、それでバリュースターって何?」

少年は黙って奥の壁を指した。
その先にある物を見てエリはおもわず息を呑む。
格納庫の壁に見えたそれは巨大な足であった。
ゆっくり上を見上げて初めて全体が視界に入った。
その物体はあまりに常識外れな大きさを持つ人型機動兵器だった。

「あれがバリュースター。史上最強無敵のスーパーロボットです!」


少年の声は力強く、自信に満ちていた。
OS(オペレーティングシステム)
現実世界での解説基本ソフトともいう。コンピュータの動作、メモリや周辺機器の管理をし、効率よく作業するための基本的なプログラム

ウィン
現実世界での解説Microsoft社のOS:Windows。パーソナル向けのWindows98、企業ネットワークに適したWindows NT、携帯端末用のWindowsCEなどがある。